COLUMN

コラム

2023.04.28
ピアニスト篠永紗也子が弾く「アラベスク第1番」

2015年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、併せて文部科学大臣賞、東京シティフィル賞、読売新聞社賞を受賞した篠永紗也子さんを PLAY 新丸子にお招きし、併設ホールにて

・ドビュッシー:アラベスク第1番
・ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調Op.66
・ラヴェル:「鏡」より洋上の小舟
・スクリャービン:2つの詩曲Op.32 第1曲嬰ヘ長調

を演奏していただきました。
これらは今後、ピティナのピアノ曲事典に掲載予定です。どうぞお楽しみに。

さて本稿では、ウィーンから帰国しこれから国内外問わず精力的にご活躍予定の篠永さんに、PLAYシリーズの魅力や音楽への想いについてお話を伺います。


Q
今日演奏した曲について、選曲した理由を教えてください。

「スクリャービンは、今この曲を弾きたい!と一週間前に急に思い立って、選曲しました。神秘和音の響きが、PLAY新丸子のすてきなサロンの雰囲気にも合っているかなと感じています。余談ですが、スクリャービンとは偶然誕生日が同じということもあって縁を感じていて、特に大好きな作曲家なんです。そのほかの曲は、自分らしさを出せるものを中心に、みなさんに楽しんでいただけるよう、雰囲気の異なるものを幅広く選びました」

Q
PLAY新丸子のホールの感想を教えてください。

「木の温かみを感じられるすてきなホールだったので、ピアノのもつ温かい音色との調和を楽しむことができました。サロンホールで、大きく響かせるような環境ではないので、そのダイナミクスの中でも音色に表情がつくように意識しながら演奏しました。もし私がPLAYシリーズに住むなら、ホールは演奏会の前に、雰囲気を変えて練習するために使いたいです。同じ曲を練習していても、場所を変えるだけでイマジネーションが膨らむことも少なくないので、たくさん活用すると思います」

篠永 紗也子(しのなが さやこ)
Q
本番前にやっている習慣などはありますか?

「本番の演奏では、常に気力を保つことが重要です。気力を湧かせるためによくやっていることは、自分の好きな本や映画を見てイマジネーションを膨らませたり、即興で好きな響きを演奏したりして、音楽を奏でたい!という気持ちを高めることです。アウトプットとインプットのバランスを意識して心がけております。」

Q
PLAY新丸子のお部屋を見学していただきましたが、いかがでしたか。

「お部屋全体が明るいところと、おしゃれでヨーロッパ風なところが気に入り、ぜひ住みたいと思いました!留学していたウィーンでの住まいも似た雰囲気だったので、居心地のよさを感じます。PLAYシリーズのセキュリティは魅力的ですし、駅近であることもよいですね。24時間防音というのもありがたいです。最近は朝型にシフトしていますが、学生時代はよく夜にも練習していました。今でも、思い立ったときにぱっと弾けるのは魅力的だと思います」

Q
ピアニストをはっきりと志したきっかけはなんですか?

「音楽好きの両親の影響もあり、幼少期から自然と音楽を聴くことが好きでした。憧れの曲を弾けるようになった時や、休み時間に学校の音楽室で友人に自分の演奏を聴いてもらってとても嬉しいという気持ちがあって、漠然とピアニストになりたいという思いをもっていました。大きな転機になったのは、中学3年生の時にいしかわミュージックアカデミーに参加し、IMA音楽賞を受賞したことです。自分としては背伸びした世界だったのですが、初めて海外の先生にみてもらって、音楽の世界を広げていただき、もっと勉強したいと思うようになりました」

篠永 紗也子(しのなが さやこ)
Q
留学先である、ウィーンでの学びについて教えてください。

「ウィーンで師事したアンナ・マリコヴァ先生は、以前より尊敬していた素晴らしいピアニストであり、私の長所を引き伸ばしてくれるタイプの先生でした。留学前は自分の未熟なところばかり目について悩んでいました。好きだったはずの曲も、自分を見失いよくわからなくなってしまって。でもウィーンでは環境ががらりと変わり、それまでのしがらみがなくなり、視野も広がって、もっと自由でもいいのかなって思えたんです。海外では言語が通じない局面も多いのですが、音楽を演奏すれば言葉の壁を超えてみなさんに喜んでいただけて、音楽ひとつあれば何も怖くないんだって感じました。音楽を続ける意義を見つけられましたね。 ある意味海外生活を経てスランプを抜け出せたと思います。自分の人生とピアノは連動していると感じています」

Q
今後どのように活躍していきたいとお考えですか?

「今年も国内外問わず、ありがたいことに多くの演奏の機会をいただいているので、それらに全力で挑みたいです。同時に、教える仕事にも一層力を入れていきたく、生徒さん一人ひとりに合った教え方ができるよう、日々勉強中です。教える仕事はとても奥深く、レッスンを通して自分自身もさまざまな学びをいただいています。音楽のすばらしさを、演奏と指導の両方で伝えていけたらと思っています」


PLAYシリーズには音大生が多く入居しています。最後に、音大生に向けてメッセージをいただけますか。

「大学生になり1人で音楽と、そして自分自身と向き合う時間が増え、私自身落ち込むことは何度もありました。今となって思うのは、その経験は決して無駄ではなかったということです。貴重な時間をどうぞ大切にしてください。音楽が好きという気持ちを信じて、ひたすら自分と向き合えば、必ず道は開けます。音楽は絶対に裏切りません。応援しています!」

篠永 紗也子(しのなが さやこ)Profile