COLUMN

自宅MAエンジニアから学ぶ!
映像作品の「音」を編集できる
環境を作る<1>

2022.01.26

VIDEO SALON ビデオサロン 動画制作をもっとクリエティブに

3回に分けて、主に映像/動画クリエイターに向けてのHowTo記事を掲載します。これは、専門メディアVIDEO SALONと作曲家/MAエンジニアの三島元樹さんにご協力を頂き実現したもので、「自宅MAエンジニアから学ぶ!映像作品の「音」を編集できる環境を作る」と題して、三島元樹さんがVIDEO SALON誌に寄稿された記事の要点を抜粋/編集して掲載します。今回は第1回目となります。
これから環境を作ろうと考えている方のほか、すでに環境を作られている方にも参考になるものと思います。
ぜひご一読ください。


三島元樹 プライベートスタジオ

VIDEO SALON 2020年12月号、2021年12月号より一部抜粋

プライベートスタジオを充実させてきたのは、映像よりも音楽関係者のほうが早かったのではないでしょうか?録音やミキシングなど早くからPC環境でできるようになり、スタジオに入らなくても自宅で音楽が作れるようになりました。映像業界においても、※MAエンジニアや作曲家は多くの人が自宅スタジオで作業を行なっています。ただMAの場合は、しっかりとした環境を用意できるポスプロスタジオの優位性はまだまだあります。
※MAとは Multi Audioの略で、映像に合わせた⾳声/効果音/音楽などのミキシングをいう。

ここではポスプロスタジオで学んだことを生かし、自宅でMA作業を請け負っている三島元樹さんに、その環境とシステムを紹介してもらいます。映像クリエイターとしては、そのまま真似する必要はありませんが、音を扱わなければならないケースでは参考になる部分も多いでしょう。

三島元樹 (作曲家/MAエンジニア)
個人プロダクションSTUDIO MONOPOSTOを設立し、映画やWEB CMの音楽、企業または個人作家の映像作品への楽曲提供など、映像に関わる音楽を作る傍ら、レコーディング/ミキシングエンジニアとしてアーティストのレコード制作に参加したり、映像コンテンツのMAなども手がける。2020年に玄光社から「映像制作のための自宅で整音テクニック」を刊行。
三島元樹


モニタースピーカー選び

音声のエンジニアは、多くの場合モニタースピーカーで作業しますが、一般的なスピーカーとの違いは、各メーカーの考える「フラットな音」を目指して作られているということでしょうか。「フラットな音」とは周波数的に凹凸のない音のこと。一般的なスピーカーは、聴き映えがするように細かい音作り(音の色付け)がなされてます。なぜなら完全に「フラットな音」って地味でつまらないと感じてしまうから。でも、それを基準にバランスをとっておけば、どんなもので聴いてもバランスが大きく破綻しないということなんです。まぁ実際には完全にフラットなスピーカーなんて存在しないんですけどね。モニタースピーカーでも機種ごとに適度な色付けがあるし、仮に完全フラットなスピーカーがあったとしても部屋の反響(部屋鳴り)により耳に届く頃にはフラットじゃなくなります。ですから、実は部屋の音響調整も重要になります。

一般的に、低い音を鳴らすには大きなスピーカーが必要になりますが、自宅MAを考慮すると、ウーファー径が5インチくらいのモデルが適当だと思います。もちろん、それ以上のサイズでも良いですが、狭い部屋や大音量が出せない環境だと使いこなしが難しくなると思います。

  • IK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitor 約4.1万円/ペア

    IK MULTIMEDIA
    iLoud Micro Monitor約4.1万円/ペア

  • JBL 104-Y3 約1.6万円/ペア

    JBL 104-Y3約1.6万円/ペア

  • GENELEC 8030C 約8.4万円/1本

    GENELEC 8030C約8.4万円/1本

  • YAMAHA HS5 約1.4万円/1本

    YAMAHA HS5約1.4万円/1本


スピーカーセッティングのコツと音量のこと

ニアフィールドでモニタリングするには左右のスピーカーと自分を線で結ぶと正三角形になるようにセッティングします。このとき辺の長さは1m以内を目安にすると良いと思います。スピーカーが少し内側を向くよに角度をつけると、音のフォーカスが合ったように定位がハッキリしてきます。ただし、正三角形の辺と同じ角度になるほど(つまり60度)角度をつけてしまうとやり過ぎなことが多いですね。多くの場合、スピーカー内側の側面が少し見えるくらいがちょうどいいです。

スピーカーセッティング

さて、モニタリングの音量ですが、これは人によって様々だと思います。スタジオなんかだと85dB-Aくらいが多いですが、一般のご家庭でこの音量出すと、たぶん近隣から苦情が来ます。その場合、70~74dB-Aくらいが現実的ではないでしょうか。こういった音量は、簡易的ながら計測用スマホアプリがたくさんあるので、気になる方は試してみてください。
では、スタジオなどではなぜそこまで大音量で鳴らすかと言うと、その音量じゃないと分からない世界があるから。それだけの音量を出す場合は、当然それなりのサイズのスピーカーが必要になります。デスクトップの小さなスピーカーではそもそも超低域などは出ないし、歪んだりします。自宅ミックスの場合は無理のない範囲で音量を出して作業してみてください。ちなみに僕は前述の通り普段の仕事は70~74dB-Aくらいの音量がデフォルトで、たまに小さな映画館で流すCMの場合は83dBAくらいまで出して作業してます。


ルームアコースティックとは?

スピーカーで音をモニタリングする時、あるいはマイクで録音する時、ルームアコースティック……つまり部屋の音響特性は正確な音を聴いたり録ったりする上でかなり重要なファクターです。反響の多い部屋でのモニタリングや録音は、音に不要な残響が加わって不明瞭になったり、はたまた不自然に強調されたりしてしまうので、そういった反響の調整を行うのが望ましいですね。かと言って本格的なスタジオのような施工をするのは、住環境や金銭面でかなりハードルが高いと思います。そうなると、ある程度自分で調整しなきゃ……ということになりますよね。
ルームアコースティックの調整については、下記ビデオサロン誌や拙書などに出ていますので、チャレンジしてみたい人は参考にしてください。

三島元樹 プライベートスタジオ

▶ 第2回目は、吸音パネルや音響補正ツールについて簡単にご紹介していきます


『「音」を編集できる環境づくり』に興味ある方は、以下のVIDEO SALON誌や書籍も御覧ください。


  • 長谷工不動産